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東京地方裁判所八王子支部 昭和39年(ワ)153号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕本件建物が原告の所有に属し、被告が占有していることは当事者間に争いがない。

原告を申立人、田口智明を相手方、被告を利害関係人として昭和三五年一一月一六日調停が成立し、田口が原告から本件建物を賃借し被告が共同使用し両名連帯して賃料を支払うこと並びに無断の賃借権譲渡、転貸があつたときは原告は無催告解除ができる旨三者間に合意されたことは当事者間に争いがない。<中略>

原告は、被告が調停によつて得た正当占有権原は、賃借権ではなく、田口の賃借権に依存したもので、条項の明文には現われていないが田口との内縁関係の存続を要件としたものである旨を主張するのであり、したがつて昭和三七年中田口との内縁関係が解消したので、田口の賃借権の存続と関係なく既にそのとき正当占有権原を喪失したものであると主張する。

調停成立当時田口と被告とが内縁関係にあつたこと、昭和三七年中その関係が解消されたことは当事者間に争いがないが、調停における三者の合意の内容として、被告の本件建物使用権が田口との内縁関係の存続を要件としたことについては、条項上なんら明示されるところがなく、条項外の約旨としてもこれを認めるに足る証拠はない。<証拠>を綜合すれば、田口は正妻があり住所も別にあつていうところの内縁関係というのはいわゆる妾の意味であり、田口は昭和三〇年頃関係のできた被告のため、「家を持つて商売をしたい」という被告の希望に従い、原告から本件建物を賃借し被告名義で飲食店を経営し収入のすべてを被告の自由にさせていたのであつて、調停において、田口は被告をも合意当事者に加えてこの状況を継続安定させたのであるが、原告もこの間の事情を察知していて被告を合意当事者に加えており、その際、将来に関係解消の場合について三者間に別段の定めはなかつたことが認められ、したがつて、その後関係解消に当つて田口が自己の建物賃借権を存続させ被告をしてそのまま居住せしめ営業を続けさせた場合には、原告はかかる男女関係外の第三者としてこれに容かいすべきものではないから、被告は原告に対し依然として建物使用権を失わないものと解するのが相当である。そして、関係解消後、田口が被告にそのまま居住させ自己は営業から漸次手を引き被告をして営業を続けさせたことは、<証拠>によつてこれを認めることができる。以上の認定に反する原告本人尋問の結果は措信しない。

原告の主張は採るを得ない。

<証拠>によれば、田口は昭和三八年一月二六日本件建物から完全に立退いていることが認められるが、原告との間に建物貸借は解除されておらないで、田口は賃借権はそのままにして依然被告をして本件建物に居住せしめ被告をして自由に営業することを認めているのである。被告は三者契約の一当事者として原告に対し、建物占有権を放棄した田口の賃借権を援用して自己の建物使用権をなお主張できるものと解するのが相当である。(立岡安正)

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